読み聞かせ絵本紹介「とらはえらい」(さく:五味太郎)

五味太郎「とらはえらい」を小学校全学年で使用

とらはえらい 作:五味太郎

発行 2006年7月 第1刷 (株)クレヨンハウスより

 読み聞かせの際に、読む側は、聞く側が季節や行事に沿ったものを選んだ方がイメージが湧きやすいかと、多少の気遣いはしてみますが、本来読書は“空想の世界へ没頭するモノ”ですので夏に真冬のお話を採用しても、一向にかまわないということになっています。が、猛暑の頃になったら怪談を採用してみたいと思っています。読む側の都合ですね。

 五味太郎作「とらはえらい」は、今年寅年だから、というノリで選びました。そういう理由だと全学年で採用せざるを得ないものになります。内容は単純ですが、しみじみと読後は我が身を振り返って考えてしまうようになっています。

  • わかりやすさ…★★★★★
  • 絵の素晴らしさ…★★★★☆
  • 何度も読む…★★☆☆☆
  • どんなときに読む…自己肯定感をあげる

 新年早々で2月、3月に使用しました。絵本の絵に釘付けになってくれるのはやはり低学年。3年生以上になると、ストーリーを理解しようとし、5、6年生になるとメッセージを理解しようとしているようです。さすがですね。

この絵本での「とら」とは何か

 この物語は、猫のような愛嬌のある「とら」を、ひたすら褒める内容です。


“とらはえらい(なぜなら)○○というところがえらい”

という文章が繰り返し使用されています。おっちょこちょいでもあるし、大人でも子供でも、誰しもが持つ若干ダメなところ、まさしく素晴らしいところ、そういった見た目や行動を褒める、という内容です。見た目の縞模様を褒めているページでも、いったん寝てしまったらなかなか起きないずるい性格を示唆するページでも、五味太郎さんの「とら」は

飄々とした、『別に、なんでもないよ』と言っているような表情

で描かれてあり、子供たちにとっては可愛らしく面白いようでした。が、この絵をずっと見続けていると大人は、毎日の自分のことを、可愛らしく言い当てられて図星…苦笑したくなります。つまりは「とら」は、自分自身の鏡であり、この絵本を読んで

  • 面白いとらだなぁと思って読んでいるうちは自覚があまりない。
  • 「とら」は、どうしてそうなるの?と思って読むようになると「とら」と自分の共通項目に気づき始める
  • 何が言いたいんだろうと思って読むようになると、自分への様々な意味合いを含んだメッセージがあると思うようになる

『とりあえずしましまのところ』から『考えても分からないことは、それ以上考えないところ』まで幅広くほめる、そしてほめるー小学生も高学年になったらすこしドキリとするでしょう。しかしそこを

ほめる

ことで、大いに反省を促されていると気付くことでしょう。五味太郎さんは、とことん子供たちの味方です。やさしく自己肯定感を持たせてあげることに大成功しています。もちろん絵本には「とら」以外の動物も出てきます。背景に描かれている木や花など抽象的で、それらも不思議なあたたかみをもたらしています。大人にはよく分からないものですから、子供たちに「これは何?」と聞いてみると、正解を教えてくれるかもしれません。

大人が「とらはえらい」を読むときは

 かつての子供だった、現在の大人たちがここに登場する「とら」をまず、自分の鏡として、悪いところも五味太郎さんに褒めてもらいましょう。その上で、自分の身の回りにいる“あのひと”も「とら」だと思って…褒めることは出来ないかもしれないけれど黙認できる大人になれたらいいなぁと憧れておきましょう(思うような人に、人は、なれませんからね)。大人であっても憧れを忘れずに。そして褒められたら、褒め返しましょう。多分人間関係が少し円やかになるのではないでしょうか。頑張って褒め返した自分を、これまた「えらい」と、ラストに褒めておくことも、お忘れ無く。

 これは私の単なる想像なんですけれど…五味太郎先生は確か阪神タイガースファンでいらっしゃったので、ここは褒めて伸ばすというファンならではの阪神タイガース教育法ではなでしょうか。

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